医学部の地域枠は益々厳しくなっていくという話

地域枠とは何か?

地域枠がうまれた背景として、医療の問題点のである医師の地域偏在問題があります。

医師免許を得た人達のうち少なくない人が、都会で働くことを希望します。理由は様々ですが、都会に行ってみたい・戻りたいという感情が一番でしょうね。

田舎の県では、卒業生100人のうち40-50人しか臨床研修を出身県内でしか行わないところもあります。そうすると、地方の医療は人材不足となるわけです。

これを解消しようと生まれたのが地域枠制度です。

卒後の何年かを①出身県内の病院で働くこと、また場合によっては②人不足の診療科(小児科・産婦・救急・へき地)で働く契約で入学します。その上で、月10-20万円(~私立ではさらに学費一部免除など)の奨学金(契約を守れば返還不要)がもらえることが多いです。

地域枠はなぜ拡大していくのか

医師の偏在は全く解決していません。このままでは、ネットの発達で、都会での研修に憧れる学生は増加してさらに進んでいくと考えられます。そのため、縛りのない学生はどんどん都会へ流出していきます。

それに対抗するために地域枠が拡大していきます。また、制度変更というのは、始めるのは難しいですが、始まるとその範囲を拡げるのは比較的カンタンですから、これまで以上に地域枠拡大は加速していきます。

さらに、地域枠の「拡大」、には枠の定員が増加していくこと、以外にも①契約を違反しづらくすること②満たすべき要件が拡大すること、が含まれてきます。

いずれも現に始まっています。

例えば①は、奨学金返還はもちろんですが、地域枠離脱者を採用した病院には補助金減額(つまり契約違反者を県外の病院が雇う理由がなくなる)、離脱者は専門医取得不能(専門医の無い場合、雇う側も不安に思うため就職先が限られる)、②は診療科選択肢を限られる、です。

このようにして地域枠の人数は増加、そして契約内容は厳しくなっていく、そんな感じです。

※ここまで書いてみると、田舎の県は私立医大の地域枠を増やす手法に走るのが得策に思えてきました。県は、私立医大の学費を肩代わりしてやる必要がありますが、学生は契約違反をした際に還すべき奨学金が膨大になり、県に定着しやすくなります。私立医大も、県が学費を払ってくれますし、その県での影響力を増やすきっかけになります。そして、なんと学生も、都会で憧れの大学生活を送ることができるということで、win-win-win(あれ?)ですね。でも、国立も違約金1000万円とかで契約させれば同じになりますね。

地域枠の今後は?

将来的には、田舎の医学部では過半数が、診療科選択の縛りがあり、かつ、制度的に脱出のしづらい地域枠となり、その枠の人材が地域医療を支えることになるでしょう。

臨床研修の自由化ってだれがやってくれたんでしょうか?昔はガチで自大学研修しか正規ルートがなかったそうですね。学生にしかメリットが無いのに自由化してくれた人には感謝しかありません。